
須代 由紀
Yuki Sudai
飛騨高山出身。自然に囲まれた土地で育ち、2005年よりセラピストとして活動をはじめました。2017年より産前産後を専門とし、東京と飛騨で、いのちに触れる産前産後ケアセラピストとして、自然や風土を大切に活動しています。がんばらなくていい、ひとりで抱えなくていい時間を大切に、安心と温かさを身体から思い出すケアを行なっています。

バリ島・ウブドで体験したボレサウナ。伝統的なハーブ療法と低温スチームで、身体の内側から整う感覚をレポートします。
からだの記憶に触れるということ
学びのひとつとして、バリ島で伝統的に行われている「Boreh(ボレ)」というハーブ療法に触れた。
私が提供しているタイの産後ケア・ユーファイとは、土地こそ異なるけれど、
ハーブや熱、香りを用いて、身体をやさしく温め整えていくという点で、どこか通じるものがある。
東南アジアには、日本ではほとんど忘れられてしまった、
暮らしの中に根づく叡智が、今も静かに息づいているように感じる。
そうした土地に身を置くと、
新しく何かを得るというよりも、
もともとからだが知っていた感覚に、ふと触れる。
温度や香りに導かれていくのは、
言葉になる前の、かすかな記憶。
ボレという知恵


私が体験したのは、「ボレサウナ」と呼ばれるケアだった。
ボレ(Boreh)は、バリ島に古くから伝わる、ハーブペーストを使ったボディトリートメント。
もともとは農作業の後や体調を崩したときに、身体を温め回復を促すための民間療法として用いられてきたものだという。
使われるのは、ジンジャーやクローブ、シナモン、ターメリックなどのスパイスに、米粉などを合わせたもの。
身体を内側から温める素材が、いくつも組み合わされている。
そこにはきっと、土地に根づき、長く受け継がれてきた感覚が、今も静かに生きているのだと思う。
蒸気にゆだねる時間


着替えを済ませ、身体に布を巻いた。
半屋外のスペースで座りながら、ハーブスクラブを塗布してもらう。
視界の先には、やわらかな陽射しがあった。
光を感じながらも、屋根の下にいるという安心感。
守られた空気の中で、スクラブがゆっくりと肌にのせられていく。
白米や赤米のやさしい粒感。
ターメリックやジンジャーの温もり。
ほんのりと発酵の気配を感じるアラック。
実際に肌にのせてもらったとき、最初はひんやりとしていた。
外のあたたかい空気と、自分の体温のあいだで、ゆっくりとなじんでいくような感覚。
この時点では、まだはっきりとした変化は感じなかった。
そのまま、木製のハーブスチームサウナへと移動した。
3〜4人ほど入れる小さな空間で、
約30分、ハーブと蒸気に包まれていた。
バンリやジンジャー、レモングラス、葉のハーブ。
いくつもの植物が重なり、空間は濃密な気配に満ちていた。
その蒸気を生み出しているのは、薪で起こされた火。
ゆらぐ熱が、香りとともにやわらかく広がっていた。
私はサウナがあまり得意ではない。
それでもここでは、呼吸が浅くなることもなく、
ただ静かに、身体がほどけていった。
汗は一気に噴き出すのではなく、
内側からにじみ出てくるような質感で、
気づけば芯まで温まっていた。
「熱に耐える」のではなく、
「蒸気にゆだねる」時間だった。
暮らしへ持ち帰るもの
ユーファイで大切にしていることは、ずっと分かっているつもりだった。
温めること、ゆるめること、無理をさせないこと。
でも、ボレサウナに入って、はっきり分かったことがある。
私はまだ、分かっていなかった。
サウナを出たあと、
からだの奥に、火が残っていた。
表面ではなく、芯に灯る熱。
汗をかいてすっきりするのとは違う。
深いところで感じる熱さ。
“整える”とはこういうことか、と、
頭ではなく、身体が先に納得していた。
この感覚を知ってしまうと、
強い刺激や我慢するケアには戻れないと思った。
産後のからだも、同じだと思う。
何かを足す前に、まずゆるめて、温める。
その順番を間違えないこと。
ユーファイでやっていることは、
まさにこれだと、確信に変わった。
だからもし、
なんとなく整わない、冷えている、力が抜けない、
そんな感覚があるなら、
一度、この“内側から温まる感覚”に触れてみてほしい。
無理に変えるのではなく、
身体が自分で整いはじめる、その入り口になるはず。
体験した場所について
今回体験したのは、バリ島・ウブドにある
Boreh Pijat – Balinese Massage, Scrub and Sauna, Ubud, Bali
伝統的なボレトリートメントとハーブサウナを組み合わせた、
ローカルに近いスタイルの場所。












コメント